日日是好日

日日是好日

日日是好日

黒松と共に

2020.10.29

掃除掃除と簡単に言いますが、これがなかなか難しいものです。一に掃除・二に掃除・三四が無くて五に掃除と若い修行僧の時によく言われました。目でゴミを拾えとも。その戒(教え)あって、草抜き・庭掃除の日天作務は体の支障が無い限りは、日々楽しんでいます。

ある和尚から「見えない所まで掃除をせよ」と諭され、初めは理解できなかったのですが、見えないところは心です。心の掃除をせよと云う事です。清浄なる心を養えということです。掃除がおわると庭も清浄・身も心も清浄なり、庭と己が一つの世界を醸し出し、落ちてきた木の葉も一つの無常に覚するわけです。わたしは庭掃除が嫌ではありませんし、苦にもなりません。草が目立ち、草木が繁り、庭の趣きが失する前に今日も朝から作務衣姿です。

【京都宇治・宝善院】金木犀の季節の写真です。

昔、宇治の銘木百選に数えられる黒松がありました。樹高約六メートル・幹囲一,二メートル、そして幹から三本の枝が伸びその長さが八メートルとお寺の宝物でした。庭の手入れの時にはいつも「私より先に逝くな」と願っておりました。そのかい空しく、平成十五年に急に松の東側の枝の色に艶が無くなり葉がしおれてきました。そして幹にもそんな症状が現れました。樹医さんや庭師さんに頼み、何とか治療を試みました。その功なく、赤くなり枯れてしまいました。根元の一部を掘り調べましたら、太い根はあるものの細いこまかい根はありませんでした。樹医さん曰く「寿命」でした。樹齢は約三百五十年。本堂の釈迦如来と対峙して、お寺を見守ってくれた感謝の気持ちで一杯でした。幼い頃、松の下で兄弟と写真を撮ったのも一つの想い出です。

それから一年、赤松は残ったままでした。松を伐採するにも罪を感じて、植え替えもできず。ある時、大黒(寺の奥方)が『干支の仏様』を庭にお迎えしようと提案がありました。檀信徒・有縁者の御助力のもと、平成二十一年五月に陰と陽の庭を設け、守本尊八仏を請迎致しました。人々の心身の安寧を願って、陰と陽の庭を設け、『廣化庭(こうげてい)』と命名し、開庭法要を厳修致しました。『廣化(こうげ)』とは、広く徳を以て人を教え導き、幸せに人生を送れるよう願いを込めて命名したものです。ご自身の干支の守本尊のひざ元に、身代わりとしてご自身の名前が書かれた干支の石を置き、幸せを願う。八佛の慈悲に寄り添う法要を厳修、毎年二月四日立春の日に干支守本尊感謝祭を執り行っております。

【京都宇治・宝善院】守本尊八仏の一体、普賢菩薩です。

禅語に『松樹千年翠(しょうじゅせんねんのみどり)』とあります。よく掛け軸にみられる言葉ですが、「樹」の文字が「寿」になっているものもあります。これは、家族や物事が松の翠の如く千年のも万年も栄えて欲しいとの願いです。この禅語には対句があります。

『松樹千年翠 不入時人意』【読み下し:松樹千年の翠 時の人の意(こころ)に入らず】

松樹は千年の翠を伝え、常に仏法を解き明かし人々に宇宙の真理を説いているが、世の人達は耳を傾けようとしない、心に刻み込まれないとの意です。松樹を釈尊の教え・仏教の本體と考えれば、有難い禅語と理解出来るでしょう。

以前にあった松と同じ処に新しい松を迎え、庭も一新し、八仏様をお迎えし、お参りの方の心の癒しの一助になればと願っています。自由に拝観頂けます。是非、廣化庭にお参り下さい。

水子供養永代供養墓の京都のお寺
〒611-0011 京都府宇治市五ヶ庄三番割34-3
宝善院(ほうぜんいん)
電話 0774-32-4683