みちしるべ令和三年六月の書です。
みちしるべカレンダーは黄檗宗青年僧会発行のものです。
『一期一会』
【読み】いちごいちえ
言葉の意味としては、『一期』は一生涯などを指す語であり、『一会』はただ一度の出会いの意です。繋げますと「一生に一度の出会い」となります。
『一期一会』は、お茶席などでよく床の間に掛かっている書の一つです。茶道でも大切にされている言葉でもあります。一度しかないその瞬間の出会いを一つ一つ大切にすることを説いた語です。何も、人との出会いだけの話ではありません。一度しかないその機会をその一瞬一瞬、大切にしましょう。ともとらえることができます。
この語は、幕末の大名であり茶人でも有名な井伊直弼(いいなおすけ)の『茶湯一会集』の冒頭に出てくる語でもあります。以下に、紹介します。
抑(そもそも)、茶湯の交会(きょうかい)は一期一会といひて、たとへば幾度同じ主客交会するとも、今日の会にふたたびかへらざる事を思へば、実に我一世一度の会也、去るにより、主人は万事に心を配り、聊(いささか)も麁末(そまつ)なきやう深切実意を尽し、客も此会に又逢ひがたき事を辨(わきま)へ、亭主の趣向、何壱つもおろかならぬを感心し、実意を以て交るべき也、是を一期一会といふ。
と、あります。茶湯での交友において、何度も会っている方たちであっても、その場・その時といのは一期(一生)に一回であります。亭主はすべての事に心を配り、どんな作法も粗末にせず真心を尽くし、客もこの一会を有難きものととらえ、亭主のおもてなしを誠心誠意をもって受け取る。これが一期一会であります。
今日の出会いは一生に一度であり、その出会いに感謝し大切にしましょうと、初めて会った人に対してのみに使われる事が多く感じます。それも間違えではないのですが、それ以外にもこの井伊直弼が伝えてる幾度の同じ方との交流も含みます。自身が関わる全ての方との一瞬一瞬も大切にすることを説いています。上でも書きましたが、人に限らず仕事であったり勉強・学校、また遊ぶことも全て一期一会と考えることもできます。
諸行無常(しょぎょうむじょう)の世の中、一瞬一瞬を大切に、「今」「ここ」で生かされている事に気付き感謝の念を持った上で、このひと時を大切に心ゆくまで味わう。これこそが『一期一会』といえるのではないでしょうか。なかなか難しい事ではあるのですが、私もこのように生きたいものです。
水子供養の数珠掛け地蔵尊への上り口にあります木槿(むくげ・もくげ)の花が開きました。毎年、白や薄いピンク、濃いピンクが咲くのですが、決まって写真の薄いピンクが最初に咲いてくれます。この花との出会いも『一期一会』といえるでしょう。
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