日日是好日

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薫風自南来

2021.05.13

みちしるべカレンダー令和三年五月の書です。

みちしるべカレンダーは黄檗宗青年僧会発行のものです。

『薫風自南来』

みちしるべカレンダー(黄檗宗青年僧会発行)令和三年五月の書です。

【書き下し】薫風(くんぷう)南より来たる。

『薫風(くんぷう)』は、爽やかな風や南風のことを意味します。三文字目の『自』は、「○○より」や「○○から」の格助詞にあたる文字です。繋げますと、「爽やかな風が南から来る」ことを意味しています。

この『薫風自南来』は五言絶句の一句です。他の句も紹介しておきます。

・「人皆苦火炎」(書き下し:人は皆、火炎に苦しむ)

・「我愛夏日長」(我、夏日の長きことを愛す)

・『薫風自南来』(薫風、南より来たる)

・「殿閣生微涼」(殿閣、微涼を生ず)

唐の皇帝であった文宗(ぶんそう)が、この起句と承句を詠みました。それに対し、詩人の柳公権(りゅうこうけん)が残りの転句と結句を詠み、この五言絶句の詩が出来たそうです。

この句が意味するのは、人は皆、夏の燃えるような暑さに苦しむが、私は夏の長い一日を愛している。その暑さの中、宮殿にそよぐ薫風は一段と清涼を感じる。というものです。

この句が禅門で親しまれるようになったのは、大慧(だいえ)禅師がこの句によって悟りを開かれたからです。圜悟(えんご)禅師の説法の中で、ある僧と雲門禅師の問答の話をされました。雲門禅師に「如何(いか)なるか是(これ)諸仏出身の処」と問うと、「東山水上行(とうざんすいじょうこう)」と答えられた。しかし、私(圜悟禅師)なら「薫風自南来 殿閣生微涼」と答えていたであろう。この説法を聞き、上に書いたと通り大慧禅師が悟りを開かれたとされています。

「薫風自南来 殿閣生微涼」の句は、煩悩妄想または分別や執着といった人間を苦しめるものを『薫風』によって吹き払われ、清涼な無心の境地を『殿閣生微涼』と顕したもので、それこそが「諸仏出身の処」ということでしょう。私たちは、こうでなければいけない、絶対になど、善悪や損得等の多くのものにこだわったり、とらわれたりしてしまい右往左往する日々です。そういった中で、少しでも『薫風』に気付けたのであれば、多くの選択を迫られる日々でも柔軟に対処し清涼な時間・日々を過ごしていけるのではないでしょうか。私もそのように生きたいものです。

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